公開:2022.03.08 更新:2023.05.18
2022年からの住宅ローン控除はどう変わる?改正前との変更点を徹底解説
住宅ローンで家を購入するなら、必ず利用したい制度が住宅ローン控除です。税の優遇制度にあたるため、マネープランで大きな影響を感じる人も多いでしょう。
その住宅ローン控除ですが、2022年から改正されることになりました。改正前、改正後にはどのような変更点があるのでしょうか?
本記事では、住宅ローン控除の特徴や、2022年からの改正点などについて徹底解説致します。
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目次
住宅ローン控除とは
住宅ローン控除とは、住宅ローンで資金を借りてマイホームの購入やリフォームをする際に、所得税が軽減される(控除される)制度です。
住宅ローン控除が適用されるのは新築住宅、中古住宅(買取再販)の購入のための住宅ローンです。
年末の住宅ローンの残高のうち1%が、その年の所得税から控除されます。適用期間は当初10年間でしたが、消費税が10%に引き上げられたときに、最長13年まで延長されることになりました。
住宅ローン控除が2022年から改正
その住宅ローン控除が再度見直され、2022年から新たに改正されました。最大の注目ポイントは、控除税率の変更です。
従来の住宅ローン控除は1%の控除率でした。改正後は0.7%に引き下げられたため、改正前の適用者とは0.3%の差が出ることになります。
ただしほかにも改正点があります。控除される期間の延長や適用要件の緩和など、税率以外にも抑えておくべきポイントがあることは間違いありません。
2022年の住宅ローン控除は改悪なのか
2022年の住宅ローン控除改正に対し、「改悪である」と感じている人も少なくないようです。確かに0.3%とはいえ、住宅ローンのような高額の借入に対しては大きな影響が出ます。それに対して改悪と感じる人がいてもおかしくありません。
しかし実際、変更点をよく見てみると、「所得要件の引き下げ」が組み込まれています。これは中間所得層を対象とした制度になったといことです。
その視点から考えると、年収が高い人にとっては改悪かもしれません。しかし年収帯によっては改悪だと感じない人、むしろマイホームを持つチャンスの幅が広がったと感じられる人もいるかもしれません。
2022年の住宅ローン控除の変更点
従来の住宅ローン控除と比べ、2022年の住宅ローン控除にはどのような変更点があるのでしょうか。控除率や所得要件をはじめ、大幅に変更された点を確認しておきましょう。
控除率の引き下げ
先に少し触れましたが、控除率の引き下げが大きな変更点のひとつです。従来は1%だった控除率が、2022年の改正では0.7%に引き下げられました。
この引き下げは新築住宅・中古住宅を問わず同率です。なお、所得税で控除しきれなかった分は、住民税からも控除がおこなわれます。「所得税からきちんと控除されていないのでは?」と感じることがあったら、住民税も同時に確認してみましょう。
所得要件の引き下げ
改正前、従来の住宅ローン控除では、申請の所得要件が3000万円以下でした。今回の改正では2000万円以下まで引き下げられています。
この引き下げがおこなわれたことによって、住宅ローン控除が中間所得層向けの制度になりました。
借入上限額の引き下げ
借入上限額も変更がおこなわれました。一般住宅の借入上限額が4000万円から3000万円へ引き下げられています。認定住宅は2021年までと変わらず5000万円です。
住宅の分類 | 改正前 | 改正後 |
---|---|---|
認定住宅 | 5000万円 | |
ZEH | 4000万円 | 4500万円 |
一定の省エネ基準認定住宅 | 4000万円 | |
一般住宅 | 3000万円 |
また、新築住宅に限り、借入上限額は2024年以降も引き下げが検討されています。
控除される期間
住宅ローン控除が適用される期間も変更されています。新築住宅と買取再販の場合、控除期間が13年に延長されました。中古住宅は10年です。もともと消費税率が上がった2019年に13年に延長されているのですが、今回は緊急措置ではなく、最初から改正案として盛り込まれたことになります。
なお、2024年以降は一般の住宅と認定住宅の控除期間に差がつくことも決定されています。
2024年以降の入居は控除期間で損を感じるかもしれません。認定住宅ではない一般の新築住宅を購入する予定の人は、購入時期を考慮したほうが良いでしょう。
新築住宅の床面積要件の緩和
改正により、新築住宅では床面積要件が緩和されます。なお、緩和自体は2019年の改正ですでにおこなわれており、今回は「当面の間は継続する」という形です。
当面の間という表現があいまいで分かりにくいのですが、「2023年までに建築確認を終えていること」「年間所得が1000万円以下であること」とされていますので、この要件を満たせる人はしばらく床面積の緩和を受けられるようです。
その床面積ですが、改正前は50m2以上が要件とされていました。しかし改正により、40m2以上に緩和されたのです。
一般的な住宅で40m2となると、1~2人暮らしに適した広さの住宅が多く該当します。改正前よりも多くの人が住宅ローン控除を使えるチャンスが生まれたことになります。
中古住宅の築年数要件の緩和
改正前の住宅ローン控除は、中古住宅の場合、数々の条件を書面でクリアする必要がありました。「耐震基準適合証明書」「既存住宅性能評価書」「既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書」の3つを提出し、耐震性の証明が求められたのです。
しかし2022年の改正で、この3つの書類は不要になりました。中古住宅の住宅ローン控除の条件は以下を満たせばクリアできます。
- 昭和57年以降に建築された建物であること
- 新耐震基準適合住宅であること
また、改正では「1982年以降の建築であれば新耐震基準に適合している」としています。つまり登記簿で築年数を証明するだけで申請できるようになったのです。
2022年の住宅ローン最大控除額の変化
上述の内容から、2022年に受けられる住宅ローン控除の最大控除額は以下になるということが分かりましたね。
新築住宅 | ||||
住宅の種類 | 認定住宅 | ZEH | 省エネ基準 | その他 一般 新築住宅 |
---|---|---|---|---|
控除率 | 0.7% | |||
控除期間 | 13年 | |||
残高の上限 | 5000万円 | 4500万円 | 4000万円 | 3000万円 |
1年間の控除額 | 35万円 | 31.5万円 | 28万円 | 21万円 |
トータルの 最大控除額 |
455万円 | 409.5万円 | 364万円 | 273万円 |
ただし、実際に控除される金額が、必ず最大控除額になるとは限りません。
納めた所得税と住民税から住宅ローン控除を受けることになるため、年収によって控除額の上限が異なります。
一度、自分の年収から控除が可能な金額を算出してみましょう。
次に、2022年の改正で、最大控除額にはどの程度の変化があったのでしょうか。2021年までと2022年以降を比較してみましょう。
~2021年 | 2022年・2023年 | 2024年・2025年 | ||
---|---|---|---|---|
控除率 | 1% | 0.7% | ||
新築住宅 買取再販 |
認定住宅 | 600万円 | 455万円 | 410万円 |
ZEH | 480万円 | 410万円 | 319万円 | |
一定の省エネ基準 認定住宅 |
480万円 | 364万円 | 273万円 | |
一般住宅 | 480万円 | 273万円 | 140万円※ |
※2023年までに新築の建築確認がされている場合
購入する住宅のタイプによっては、かなりの幅が生じることが分かります。
どちらかと言えばZEHをはじめとした環境配慮タイプの住宅は、比較的減額が少ない傾向です。
政府がカーボンニュートラルを推進していることも関係しているのでしょう。
住宅ローンの借り方が変わる
2022年の住宅ローン控除の改正で、住宅ローンの借りかたが変わるという見方があります。
全期間固定金利を選択する人が増えると予想される
固定金利とは、ローンの完済まで金利が一定であり、市場の金利が上昇しても返済額に変化がないタイプです。ただし基本的に金利1%強で設定されているため、返済負担が変わらないという安定感がある一方、定期的に金利が見直される変動金利よりも返済負担が重くなることが多いです。
しかしローンの年末残高が多いほど控除される金額は上がり、節税効果を得られる可能性があるため、住宅ローン控除の改正後は固定金利を選択する人が増えると予想されます。
保証料を金利に上乗せして支払う人が増える可能性がある
ローンの返済が長期間滞った場合、返済者に代わり返済を行う会社を保証会社といいます。
保証会社は返済者から保証料を受け取ることで、返済が滞った際の返済立て替えを保証するのですがこの保証料には支払方法が2パターンあります。
一つは「住宅ローン借入時に一括支払いをする方法」、もう一つは「住宅ローンの返済金利に0.2%を上乗せして支払う方法」です。
住宅ローン控除改正後、こちらも上記同様の理由で、金利に上乗せして保証料を支払えば控除額を増やせる可能性が生じるようになりました。
今後は金利への上乗せでの支払いも増えることでしょう。
団体信用生命保険の保証を手厚く設定する人が増える
ほとんどの金融機関では住宅ローンを借りる際、団体信用生命保険への加入が必須となっています。
団体信用生命保険とは、借入者が無くなった場合、若しくは既定の高度障害におちいった場合、ローン残高の支払いが0円になる(免除される)保険です。多くの場合で保険料は金融機関負担になりますが、特約を付ければ三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)なども保障の対象にすることができます。
ただし特約分の保険料については金利に0.1〜0.3%程度を上乗せして支払うことが一般的であるため、特約を付けて保障を手厚くし、その保険料を控除対象として取り戻す人が増える可能性があります。
今住宅ローン控除を受けている人への影響
2022年の改正前に住宅を購入し、すでに住宅ローン控除を受けている人もいます。この場合、改正後の内容が適用されることはなく、改正前の内容のまま控除が継続されます。影響や変更は一切ありません。
まとめ
2022年から改正となった住宅ローン控除には多くの変更点があります。控除率の引き下げに大きな注目が集まっていますが、借入上限額や対象の年収帯の引き下げがあったことにも理解が必要です。
今回の改正により、さらに幅広い人が住宅ローン控除を利用できるようになりました。同時に、今後は金利の選択や保証料の支払い方法、団体信用生命保険への考えかたなどが変わると見られています。
大きな変化に疑問を抱くかもしれませんが、不明な点はハウスメーカーや工務店に相談し、必ず確認した上で購入計画を進めましょう。
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~2022年の住宅ローン控除の変更点~
・控除率の引き下げ
・所得要件の引き下げ
・借入上限額の引き下げ
・控除される期間
・新築住宅の床面積要件の緩和
・中古住宅の築年数要件の緩和
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